まっ、別にわたしには関係ないよね!翔くんが勝手に渡してきたものだし、わたしは痛くも痒くもない!
勝手に開き直り、立ち上がろうとしても何故か力が出てこない。
…………………………
痛くも痒くもない?
そんなの嘘に決まっている。嘘なのだ、本当は胸が裂けるように痛い。
こんなことになるぐらいのなら意地を張らずにとっとと指にはめてしまえばよかった。
わたしは矛盾だらけだ。
嫌いなはずの翔くんから貰った指輪を失くしたぐらいで、胸が痛くなる、泣き出したくなる。
この胸の痛さはあの時、2年前の胸の痛さにとっても似てる。
裏切られたときの絶望ではなく、あの時、翔くんから貰った全部のものを捨てようと決意した日の痛さに似ている。
ごめんなさい、ごめんなさいと泣きながらダンボールに詰めた記憶が今も鮮やかに思い浮かびあがってくる。
捨てたくなかった、捨てたくなんてなかった。
どんなに小さなものでも翔くんから貰った全部がわたしの宝物で、大切なもの。
好きという気持ちも、胸の痛みも、涙も、笑顔も、全部全部あなたから貰った大切なもの。
なのに捨ててしまった、翔くんのことを好きでいることはあまりにも辛くて、苦しくて、悲しくて、弱いわたしはそれを全て受け止める勇気なんてなかった。
ごめんなさい、ごめんなさい
好きでいられなくて、約束を守れなくて、本当にごめんなさい
この痛みは、翔くんにではなく、わたし自身に絶望したときの痛みだ。

