「渡す機会がなかっただけだが、何か?」
腕を組み、ふんぞりながら逆にそう聞いてきた翔くんにわたしはカチーンときた。
な、なんでいっつもそう偉そうなのよーー!!
「渡すつもりなら設楽の恥だとか言わないでよ!!」
「恥は恥だろ」
「じゃあ指輪返す!!」
「それは却下する」
わたしの怒りをさらりと受け流す翔くんを見てるとますます腹が立ってくる。
「明日にでもそれを指にはめておけ」
命令口調でそう言われ、文句を言ってやろうと顔を上げると、翔くんが真剣な顔でわたしを見てくるので、口を閉じ、思わず首を縦に振ってしまった。
だ、だってあんな真顔で見られちゃったら頷くしかできないもん。
翔くんはずるい、わたしが翔くんの言うことに逆らえないことを知っててワザとそんな真剣な顔で見てくる。
そういうところは結局2年前から変わっていない。
嫌い、嫌いと頭の中で何度も呟くのに、体が自然に動く。
翔くんがはめろというのならはめるしかない。

