気付いたら翔くんの顔が目の前にあり、思わず後ずさってしまった。
翔くんの顔が目の前なんて…心臓に悪い!!
バクバクと鳴る胸を押さえ、わたしはなんとかして笑顔を作った。
「べ、別に。あ、あと卒業おめでとうございます。これであなたと学校で顔を合わせることが出来ないと思うとすっごく嬉しいです」
「嫌味をどうもありがとう」
翔くんもわたしに負けじと作り笑顔を見せてくる。
「そういえば、翔くん手ぶらですか?確かさっきすっごく花束を持ってたような…」
さっき見たときはお嬢様方から貰った両手では抱えきれないほどの花束で顔が見えなかった。まさに両手に花、状態だった。
「あぁ、あれか。ほら、あそこに」
翔くんの視線を辿ると、さっき翔くんが乗ってた車の中に大量の花束があった。
「祝ってくれるのは嬉しいが、あの量はさすがに困る」
困るとか、あげた人に失礼じゃないか。
でも、結局数日後にわたしはお屋敷のあっちこっちにその花を目撃することになるのだ。
翔くんと肩を並べながら帰るのもきっとこれで最後になるんだろう。
………
やっぱりちょっと寂しいかも…なんて思ってない!!
今、お屋敷の中に入ることを躊躇った自分が恥ずかしく、扉を思いっきり開けた瞬間

