「…美咲さん、何かお悩みでもあるのですか?」
「へっ!?」
顔を上げると、ひばりさんの顔が目の前にあって思わず後ずさってしまった。
て、てか悩みって…
わたしはふと翔くんの顔が頭に浮かんだ。
いやいや、ここで翔くんの顔が出てくるのおかしいでしょう。
まるでわたしが翔くんのことで悩んでるみたいじゃない。
まぁ、悩んでるっちゃ悩んでるけどね。でも翔くんの実の姉のひばりさんに翔くんの悪口を言うのはちょっと…わたし、どんだけ悪い奴なんだよ。
「な、悩みなんてありませんよ!」
「…そう?あんまり無理しないでね。翔さん、美咲さんに無茶ばかりさせてるから…」
「いえ、全然ですよ」
結婚した時点でもう諦めてますから。
やっぱりひばりさんは優しい人だ。
嫁いできたばっかりのとき、広すぎる屋敷の中で迷うと、いっつもひばりさんが道案内してくれたのです。
本当にあの馬鹿な弟と違って、ひばりさんは優しい。

