るんるんとスキップしていると、突然曲がり角から人影が出てきた。




危うくぶつかりそうになったけど、なんとか急ブレーキして顔を上げると、見慣れた顔がそこにあった。





「こんばんわ、美咲さん。今日もよい夜ですね」




「ひ、ひばりさん!」




綺麗な着物をバシッと着こなし、まさにお嬢様と人々に思わせるお嬢様の中のお嬢様この人こそ、わたしの兄の夏兄さんの婚約者であった設楽家長女、設楽ひばりさんです。




「こ、こんばんわ」




ひばりさんに会うたびに兄が婚約をすっぽかしたという罪悪感でわたしはひばりさんと視線を合わせることが出来ない。





「今日は満月。きっと遠い地の彼方に行った夏様もこの月を見ているとと思うでしょう?」




「は、はぁ…」




しかも、なんか兄が他の女の人と逃げたなんて知らないらしく、未だに兄を想い続けてるという…




も、もし兄が婚約が嫌で逃げたなんて知ったらこの人はどうなるんだろうか…?




会うたびに夏兄さんの名前を出してくるし…




兄さんもなんでこんなひばりさんから逃げたのであろうか?




だって、ひばりさんは翔くんと違ってすっごく優しいし、女の子っぽいし、一途に兄さんのことを想ってくれてるのに…




兄さんは馬鹿だ。