するとそれを聞いた母さんはいきなりわたしの額にデコピンをする
「あいたっ」
「馬鹿ね、あんた。そんなんじゃないわよ。例えあんたが母さんの娘じゃなくても、花菱美咲なんかじゃなくても、きっと翔くんはあなたのことを見つけ出して、好きになっていたと思うわ」
「えっ・・・?」
「だって人を好きになるのって理屈なんてものじゃなくて、直感よ。直感。翔くんがあなたを好きになったのはあなたが花菱美咲だからなんかじゃなくて、直感であなたのことが好きだなぁって思ったのよ。
それに翔くんがあなたを好きになったのってまだ美咲が生まれたばかりのころで、その時翔くんもまだ2歳だったし、たぶんあの子もどうして美咲を好きになったのかなんてわかっていないわ。
それでも美咲をずっと好きでいてくれたんだから、あんたももう少し自分に自信を持ちなさい!女はね、愛されて綺麗になるけど、自分に自信を持てたならもっと強くなれるわよ」
そう言って、思いっきりわたしの背中を押すと、母さんはにひひと笑う
さすが6人の子供の母さんで、あの父さんの奥さんだなぁ
やっぱり色々と母さんには敵わないや、すぐにわたしの心の奥の不安をすっと取り除いてくれる
この1年間、わたしは毎日母さんとは顔を合わせられなかったけど、やっぱり自分はこの人の娘でよかったと思わせてくれる
そんな穏やかな気持ちになっていた時、控室のドアがコンコンとノックされた

