こんなのあんまりじゃないかと、目頭が熱くなったとき、頭上から兄さんたちの優しい声が聞こえてきた
「美咲・・・父さんがずっと『け』しか呟けないのはきっと」
「死ぬ前に君が結婚式で真っ白なウエディングドレスを着るのを一目見たいからじゃないのかな?」
兄さんたちに言われ、はっとする
そうだ、父さんはもう長くはない
こんなわたしに父さんにやってあげられることといえば父さんが死ぬ前に一緒にバージンロードを歩いてあげることしか・・・
今も苦しそうに咳きこむ父さんの姿を見て、わたしは決意した
「やる!わたし、結婚式やる!」
その瞬間、深刻な表情だった兄たちの顔が瞬時にいつもの悪戯っ子のような笑みに戻ったところをわたしは垣間見た
「やったぁぁぁぁぁぁぁ!!結婚式!!美咲のウエディングドレス!」
「これで僕たちの努力も報われるというものだよ!!」
突然立ち上がり、お得意のフォークダンスをし始めた双子に、わたしを含めその空間にいたたくさんの人が唖然となった

