その日の夜、翔くんが帰って来る気配を感じて大広間に出ると、そこには大きすぎるぐらいのビックサイズな熊のぬいぐるみが独りでに歩いていた
って、何事!?
今日はなんと翔くんが人生初、巧叔父さんと食事をするということでいつもと比べものにならないぐらいの緊張している翔くんを送り出し、そしてたった今帰ってきたのだが
何故に帰ってきたのが翔くんではなく、熊のぬいぐるみ?
呆然とそのぬいぐるみを眺めていると、ぬいぐるみはピタッとわたしの前で止まり、後ろからひょこっと翔くんの顔が現れた
「な、なんだ、翔くんかぁ・・・わたしてっきりぬいぐるみが自分で歩いてるんだと思っちゃったよ」
「普通に考えてそれはないだろう」
「それ、どうしたの?」
食事に行ったはずなのに、ぬいぐるみを連れて帰って来るなんて・・・
翔くんは少し言い難そうに、いや、気恥ずかしそうに口ももごもごとさせ、小さい声で呟いた
「と、父さんが、くれたんだ・・・」
嬉しそうに頬を緩ませる翔くんを見て、そっか、やっと二人の間のわだかまりが取れたのかとほっとした

