「俺は、設楽も設楽翔も心の底から大っ嫌いだった。ずっと頑張って努力しても、結局あいつは余裕な顔して俺の前を歩いていて、どんなに俺が駆け足で走っていようが追いつけなかった。



爺さんがおかしくなったのも俺が設楽翔に敵わなかったせい、俺が爺さんの期待通りの孫ではなかったせい。




だから全部壊してやろうって思った。頑張って積み上げてきたものも、爺さんの期待も、傾きかけた結城も、全部壊れればいいと思ったんだ。




どうせどんなに努力したところで、俺は設楽翔みたいにはなれないから。




けど、結局はそんな大嫌いな設楽が、あと一歩のところで全てが壊れる前に引き止めたんだ。まるで『壊れたのならまた作り直せばいい』と言っているみたいに修復できないところを全て取り壊し、新しい土台を与えてくれた。




俺に、爺さんに、結城にやり直すチャンスを残してくれたんだ」





笑顔で自分の今までの苦しかった心情を話す輝を見ていると、なんでだろう少しだけ安心した




さっき、自分に絶望したと聞いて、本当にあのまま堕ちてしまったのかと思ったが、よかった、ちゃんと引き止めてくれてた人がいた




わたしはあの時、何もしない選択をしたが、わたし以上のお節介さんがあと一歩で奈落の底へと堕ちていく輝の腕を引っ張って、違う道へと誘ってくれたんだ




その人が誰だったのか、大体は見当がついている




やっぱりあの人はわたしが思っているよりもずっと優しい人だった




そしてわたしは言いたいことを全て口に出し、すっきりとした表情の輝に一言