言っては駄目だ




謝ってしまっては駄目だ




輝がどんなに苦しんで、あの時あの言葉を言ったのか、わたしにはわからない




そしてあの日から今日までいったいどんな思いで過ごしてきたのかも、知らない




だから知ったふりをして彼の言葉をまた否定してはいけない




もう既に一度、彼の言葉を踏みにじったわたしに謝る資格なんてないんだ




謝って、自分の心を軽くしようだなんて思ってはいけない




わたしはずっとこの重みと共に生きていくと、決めたのだから




わたしからの反応がないことで顔を上げた輝は、目にいっぱいの涙を溜め、それを必死に堪えているわたしの姿を見て、彼は少し驚き、そして小さく微笑んだ




「なぁ、美咲。あんなことを言ってしまった俺が言えることじゃないんだけど、美咲はやっぱりすごいんだと思う」




「・・・どこが?」




目に溜まっていた涙を制服の袖で拭き取り、輝の言葉の意味を聞いた




「美咲はね、自分が間違えたことを素直に間違えたって認めることが出来るんだ。昔からクラスメートとかと喧嘩をしたときも最初はお互いに意地の張り合いとかで言い合いとかになってしまうんだけど、美咲はいつも自分が間違えていたと気づくと、どんなに相手に腹を立ててようが、ちゃんとごめんなさいって言えるんだ」