奴は今にも噴出してしまわないように必死に肩を震わせながら手で口元を押さえている
「・・・おい」
「ぶはっ!ごめん、まさか天下の設楽の社長がそんな簡単なことを聞いてくるから、正直かなりおかし・・・じゃなくて驚いてしまったよ」
「確実に今、『可笑しい』と言いかけただろお前」
「そんなことないよ。でも僕はそんなこと考えたことなんて一度もなかったからなぁー、うーん・・・」
やっぱり聞く相手を間違えたと思い、質問を取り消しにしようとしたとき
「別に無理して会話しようとしなくてもいいと思うよ」
「は?」
「そもそも君はそんなに口数が多い方じゃないし、もし無理して会話をしようとしたら逆に気を遣わせてしまうと思うから、もういつものように仏頂面でたまに口を開ける程度でいいんじゃないか?」
「・・・そうか」
期待外れな回答だったが、妙な説得力がある
本当に、よくわからない男だ
「それと昔の詫びとしてなんだが、あいつが気に入っていたぬいぐるみを贈ろうとしているのだが、それはどうだろうか?」
「・・・巧くん。忘れていないとは思うけど、彼はもう既に立派な大人の男性だよ」
「・・・そうか、それじゃあぬいぐるみよりも等身大のツキノワグマの木彫りの方がいいのか?」
「・・・巧くん、僕、君のそういうところ嫌いじゃないよ」
「?何変なこと言ってるんだ?」
こうして夜は更けていく

