やっとのことで読み終えた書類を膝の上に置き、眼鏡を外し、息を吐くと、扉のノック音が聞こえたのでそちらを向くと、宙に浮いたメロンがそこにあった
もちろんメロンが一人で宙に浮くのはありえないので、突っ込まずに暫く凝視していると、メロンの重みに耐えかねたのか人の腕が突然扉の向こうから出てきた
相変わらずアホだなと思いながらもその客人の来訪に少しだけ胸が躍る自分もいた
「・・・何をしてるんだ、雪」
「ちぇっ、やっぱりばれてたか」
昔と変わらない妙にテンションが高い男が一人、部屋へと入ってくる
「じゃ、じゃじゃ~ん!!メロン持ってきたんだ、巧くん。一緒に食べよ~」
持ってきたメロンを高らかに持ち上げてそう叫ぶあいつはやはりあの娘と親子なんだなと思わせる
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「遂に巧くんも疲労で倒れる日が来るなんて・・・、まぁぶっちゃけ今まで倒れてこなかった方がおかしいんだけどね。本当、まったく倒れないもんだから、とっと倒れろよと願ってたけど・・・」
「おい」
「あははー、まさか本当に倒れちゃうなんて僕ったらお茶目さん」
歳に似合わずぺろっと舌を出したあいつを心底殴りたい気持ちに駆り立てられたが、こいつも一応病み上がりだったと思い出し、握っていた拳を緩める