それだからわたしのような馬鹿には酷い人と誤解されることも多いと思うかもしれないけど
『お前に設楽の跡を継げと命じた覚えはない』
この言葉もきっと本当は翔くんのために放った言葉
その真意はやっぱりよくわからないけど、それでもよかったぁ・・・
わたし、やっとわかった
巧叔父さんは絶対にわたしが当初思っていたひっどい冷徹人間なんかではなかった
本当の巧叔父さんはきっと仕事熱心で、誠実で、ちょっと愛情表現の仕方が不器用だけど思い出を大切にして、家族を本当に愛している人なんだろう
だからね、翔くん、大丈夫だよ
あなたのお父さんはちゃんとあなたのことを愛しているから、だから泣かなくていいんだよ
幼いころの辛い記憶を思い出してしまったせいか、翔くんの目元には薄ら涙が浮かんでいる
わたしの口からは教えてあげられないけど、きっとわかる日が来る
その日までは力不足かもしれないけど、わたしが傍にいて翔くんの涙を拭ってあげるからね
そしてわたしは翔くんの頬にキスを落とし、部屋の電気を消した
おやすみ、翔くん