『・・・ぶっ倒れるなら、それでいい。だが、俺の前ではないどこかで倒れてほしい』
この言葉は巧叔父さんの翔くんへ対する精一杯の愛情だったんだ
誰だって大切な人が目の前で倒れたら苦しい
もしその人が本当に本当に大切で自分の命よりも愛おしい存在だったらきっとずっとその人のことを考えてしまって他のことに手がつくはずがないんだ
『そんなことでは効率が落ちる。これからそんな姿で俺の前に現れてくれるな』
落ちるのはきっと巧叔父さんの仕事の効率
翔くんが去った後に暫く長い間書類を読んでいたのは翔くんのとっても疲れている姿を見てしまったから
心配してしまうから見たくなかったんだ、知りたくなかったんだ
わたしはとことん自分が馬鹿だったと気づく
やっぱり、そんなはずなかった
父さんがわたしを愛してくれたように、巧叔父さんはちゃんと翔くんを愛している
その違いはただ目に見えるか見えないかというだけだった
わたしが父さんに抱きしめられたり、お見舞いに来てくれたと同じように翔くんはきっとこんな風に寝ているときとかに頭を撫でられ、名前を呼ばれていたはずなんだ
巧叔父さんはただ愛情表現が不器用なだけだった