「幼いころ、まだ小学校にも入ってない時期に一度高熱が出て、母が今の美咲のように寝かしつけてくれた記憶はある」
話をしてうるちにやっぱり疲れが溜まっていたのか、何度もまばたきをする翔くんはたぶん今、少し寝ぼけているのだろう
普段なら絶対しない自分の幼いころの話をしてくれるからなんだか少し新鮮な気分だ
「へぇー・・・」
「その時、俺は相当ぐずっていたらしく、母に自分が高熱なのに父が帰ってこないのは、自分のことが嫌いだからなのか?と聞いたらしい」
「・・・うん」
たぶんその疑問は今でも翔くんの胸の奥に潜んでいる
そうだよ、わたしが父さんや兄さんたちに好きでいてもらいたいと思うように、翔くんだって本当は巧叔父さんに自分を好きでいてほしいはずだもん
「だけど、母は笑ってそんなことないって言ってくれて、父が帰ってこないのは俺が高熱だと聞いて心配で仕事に集中が出来ないって、だから父が早く仕事に専念して帰ってこられるように、俺は熱を早く・・・なおさ・・・」
うとうととしていたまぶたが完全に落ち、翔くんはそのまま眠りについた
・・・・・・そっか、そうだったんだ・・・
翔くんの寝言のような幼少話のおかげでわたしはやっと探していた最後のピースを見つけることが出来た

