巧叔父さんはさっき翔くんに渡された書類を見るのが忙しく、さっきの会話の後から一度もこちらを見ない
仕方なくわたしもいつも通り、横でりんごを剥いていたが、腹の中はまだぐつぐつと煮えたぎっている
翔くんと巧叔父さんが直接会話しているのを聞いたのが、これで二回目だったけど、どう考えても親子としての接し方ではない
たとえ会社で上司と部下みたいな関係でも、普通ならもっと心配してもいいはずなのに、なのに・・・あの言葉・・・
・・・やっぱり巧叔父さんは翔くんのこと、どーでもいいと思ってるのかなぁ
別に巧叔父さんがわたしにどんなに冷たい態度をとっても、わたしは所詮血の繋がっていない赤の他人だから、それでいいんだけど
翔くんとは親子なのだから、少しぐらいは親らしいことをしてあげてもいいじゃないか
本当のことをいうと、翔くんが父親という存在に憧れる気持ちはちょっとわかるような気がする
仕事で追われて毎日忙しいそうな父を見て、わたしもほんの少しだけども父がかっこよく見えたし、やっぱりわたしにとっても大きな存在だった
でもわたしが父さんなのが大好きなのは、たまに会えた時の満面の笑みでわたしを抱っこしてくれたし、熱で寝込んだ時だって大切な食事会を蹴ってまで様子を見に来てくれた
だからあの時の設楽家の親子らしからぬ会話にはショックを受けたし、翔くんに向けられる言葉の数々が信じられなかった
・・・そういえば、ひばりさん言ってたなぁ
翔くんが幼いころ大好きだった熊のぬいぐるみを巧叔父さんのキツイ一言のせいで自分で切り刻んだって・・・
今まで色んなことを会話していくうちに、この人もやっぱり根っからの冷徹人間ではないんだなぁっと思ってきたけど、やっぱり少しよくわからない

