「ていうかりんご代ぐらい翔くんに言ったら出してくれそうじゃない?」
地味に器用な兄さんたちが綺麗な造花を作り上げていく中、最もな意見が飛び出てきた
「駄目!今回のお見舞いは翔くんには言ってないの!キャサリーヌさんや使用人の人たちにも口止めしてもらってるの!」
これはわたしの問題なんだから、翔くんを巻き込んではいけない
もし翔くんに知られたら、なんか気を遣わせてしまいそうで申し訳ない
それにわたし自身の力でどうにかしたい
『美咲は結局自分では何もしていない』
あの日、輝に言われたあの一言がわたしの胸の奥に刺さって今でも抜けない
確かにわたしは今までたくさんの人に甘やかしてもらいながら生きてきたので、自分の力で何かを成し遂げたことは一度もなかった
だから、とても些細なことだけども今回は誰にも頼らずに自分の力でなんとかかしようと決めた
「でもなんでこんな誰もいないところで、しかもこんな地味なことをしてるのさぁ?」
「そ、それはその・・・最初はバイト?っていうものをしようとしたんだけど、桂さんとか使用人さんたちに何故か引き止められて・・・」
人生初、自分でお金を稼ごうと思い、初めてアルバイトという言葉を知ったわたしはどんなバイトをすればいいのかと色んな人に聞いたのだが、みんな口を揃えてやってはいけないと言うのだ
だから仕方なくこんな地味な内職を選んだのだが、設楽の屋敷にいるといつのまにか全部完成されていて段ボール5箱分が一日のうちに終わってしまうので、それじゃあいけないんだよ!!と思い内職の仕事は誰もいない花菱の屋敷でやることにしている
設楽の使用人さんたちは本当に優しくて、仕事が出来る人たちばっかりなんだけど、今回ばかりは少しばかり遠慮してほしかったです

