これでもわたし、一応名家のお嬢様だったし、果物ナイフを持つのだって初めて



剥くなんて簡単に言ったけど、どうしよう、怖くて剥ける気がまるでしない




「おい!!」




「は、はい!」




そんなわたしのことなんて露知らず大声で巧叔父さんが叫んだものだから、手元が狂い、そしてそのまま




グサッ




ナイフが見事にわたしの左手の人差し指に刺さった、少しだけだけど




「・・・もしかして、剥いたことないのか?」




事の全てを見ていた巧叔父さんは人差し指から流れ出る血を見ながらボソッと呟いた




「り、りんごぐらい、剥いたことありますよ!!」




「いや、だが現に今、手を切って・・・」




「それはりんごの皮の色がわたしの手に反射して赤く見えるだけです!!わたし、手なんて切ってませんから!!」




ムキになったわたしは震える手でりんごの皮を剥き始めるが、すぐに




グサッ




ナイフが指に刺さる




「・・・」




「・・・」





場になんとも言えない空気が流れる