意味が分からなかった
なんであの言葉で安心するのか
でも、これが翔くんの感じたことなのだから、わたしは黙って聞いていよう
「昔から怖かったんだ。もしあの人の期待に応えられなかったらどうしようってどうしようもないプレッシャーに押しつぶされそうになりそうだったんだ。でもあの時、あの人にあの一言を言われて、やっと解放された気分になって、でもそしたら今度は違う感情が込み上げてきた」
「違う感情・・・?怒りとか?」
「そうじゃなくて、なんていうか喪失感なのか、すっごく虚しくなったんだ。父親というプレッシャーがなくなった今、俺には何が残ってるんだと考えてみたけど、何もなかった。俺には何も残っていなかったんだ。やりたいことも、するべきことも、何も・・・」
今にも泣きそうな翔くんを見て、居てもたってもいられなくなり、つい声を発してしまった
「そんなことないよ、翔くん!!確かに今は何もないかもしれないけど、でも絶対になにかあるはずだよ、翔くんのやりたいことも、するべきことも!それに翔くんは一つだけ絶対にやらないといけないことがあるの」
「やらないといけないこと・・・?」
「わたしと幸せになるの」
思いもよらないことを言われたのか、翔くんは瞳を見開かせる
「翔くんにはまだわたしが残ってる。これからちゃんとした結婚生活に入って、子供も生まれるから家族も出来て、そしたらみんな一緒でずーっと幸せに暮らすの。だからわたしと一緒にずーっと幸せになるの」

