「使用人一同、翔様と美咲様のご武運を心の底からお祈りいたします。今日もお早いお帰りをお待ちしておりますよ。気を付けて、いってらっしゃいませ」
「・・・いってくる」
そう言って、みんなに一瞥すると、翔くんはわたしの手を引き、車へと乗り込んだ
よかったぁ、これで少しは翔くんの気持ちも少しは軽くなるかもしれない
本当に翔くんは、使用人さんたちに愛されまくってるなぁ
さっき扉を開けようとしたときに、すっごい数の人の声が聞こえたからきっと翔くんを励ましてくれるだろうと思って突っ込んでいっちゃたけど、まさか
「こんなボロボロになろうとは・・・」
さっきの人だかりのおかげで折角直した翔くんの髪もワイシャツの襟も、そしてわたしの髪まで恐ろしいぐらいにぐっちゃぐっちゃになっていた
真面目な話、人が多すぎて危うく人の波に溺れるところだったよ、もし蓮菊さんが止めてくれなかったらわたしたぶん完全に溺れてたと思う、うん
なんとか戻そうと、手で髪をとかしていると、隣から小さく笑った声が聞こえた
隣の翔くんをそーっと見ると、微かだが口元が上がっている
ほっ
よかった・・・、ちょっと緊張が解れてきてる

