巧叔父さんが倒れたことが心配なのか、それともそんな叔父さんに会いに行くのが怖いのか、翔くんは不安げに瞳を下に伏せている




そうだよね、怖いよね




翔くんは叔父さんに会うことに怯えてるけど、内心はすっごく尊敬していて、大好きだから、よくわからない複雑な気持ちになっちゃうもんね




「大丈夫だよ、翔くん。ほら、わたしと一緒に行こう」




ゆっくりと扉を開けて、廊下の外へと出る




翔くんが一歩、部屋から出るなり、たくさんの人が一斉に翔くんの周りへと押し寄せていった






「翔様、大丈夫ですか?ご気分のほどは・・・」




「ばっか、そんなこと言ったら余計に緊張させるだろうが。翔様、今日はご無理なさらず、いつも通りで・・・」




「翔様ー!わたし、翔様のために御守り作ったのー。これ受け取ってがんばってー」




「こらっ、そんな粗末なもの翔様に渡すんじゃないわよ!!逆に変なことに巻き込まれでもしたらどうすんのよ!」





次々に放たれる言葉は全て翔くんのためのものだった




結局てんやわんやとお祭り状態みたいになってしまった廊下はメイド長の蓮菊さんの『うるさーーい!!』という一喝により収まった




あまりにも信じがたい光景を目の当たりにして状況がよく把握していない翔くんに最後、ここにいる全ての使用人たちの心を代弁するかのように蓮菊さんは優しくいつもの馴染みある台詞を言った