兄さんたちはいなくても、もしかしたら花菱の本社の方にいるって可能性があるかもしれないけど、こんな朝早くからお母さんが部屋にいないことはおかしい
不安で泣きそうになりながらも必死に屋敷中を歩き回る
「冬?」
一つ一つ部屋の扉を開けながら、家族の名前を呼ぶが、誰も返事はしてくれない
「未海?」
幼い妹が普段遊んでいる子供部屋にも遊具と玩具だけが寂しくぽつんと置いてあるだけ
どうしよう、どうしよう
誰もいない、どこにもいない
なんで、なんで、なんで
脳内によぎる『花菱、売却』という文字
まさか、本当に・・・?
その時、物陰から誰かの気配を感じた
「誰!?」
バッと後ろを振り向くが、誰もいない
誰もいないこの屋敷でいったい誰が・・・?

