思い出した。




全部の始まりはあのたった一言、美咲が言った何気ない言葉だったんだ。




『かっこいいね、翔くん』




こんな何でもないような何気ない一言が全てだったんだ。






怖かった、怖かった




美咲の俺に対する気持ちは俺が『すりこみ』で仕組んだもの。




でも美咲は雛鳥ではない、いつかその『すりこみ』も終わるときが来るかもしれない。




もしかしたら自分ではなく、他の誰かを好きになるかもしれない。




それを考えるだけで怖くなった。




俺にはずっと昔から美咲しかいなかったのだ。美咲だけがたった一人の俺だけの女の子だった。




だから嫌われないように、いつまでも『かっこいい設楽翔』にならなければならなかった。






ボロボロと涙を流す俺を見ていて双子は、にんまりと満面の笑みを浮かべていた。




「君が美咲の目を見て話せなくなったのは、『かっこいい自分』を演じているのをばれるのを恐れたから」




「美咲を必要以上に避けるのは、ボロを出さないため」




「そして、美咲から離れたのは『かっこいい』演技に限界が来たから」