そんなこと言われても、そんなものわからな…
『かっこいいね、翔くん』
その時、頭の中で聞き覚えのある声が木霊した。
『すごーい、すごいね、翔くん』
脳裏にはっきりと焼き付いている幼いころの美咲の笑顔が俺の頭の中で映し出された。
『翔くん、すっごくかっこいいね』
ポタッ
紙の上に一粒の滴が落ち、徐々に濡れていく。
そしてまた一粒、一粒と落ちていく。
いったいこの液体はどこから落ちてくるのだろうと思ったが、どうやら答えは考えずともわかる。
情けない、本当に情けない
「やっと気づいたかい?翔くん?」
「そうだよ、君が急に人が変わったようになったのも、美咲を遠ざけたのも、本当に恐かったことも全部それが理由だったんだよ」
「「君が本当に恐れていたことは、美咲に嫌われることだったんだよ」」

