結局、俺は美咲を泣かせることしか出来なかったのだ。
「…用は済みましたか?」
自分でも驚くほど低いトーンで発せられた言葉を聞き、いつまでも人の悪口をグチグチと言っていた双子の動きがピタッと止まった。
「さっきのあなたたちの攻撃で血が出るほどの傷が出来ました。だから、もうこれでいいですよね?」
「…どういうことだい?」
「……まだ、殴り足りないならどうぞ。あなたたちの気が済むまで思う存分殴ってくれても構いませんよ」
それで本当に全部終わるのなら、それでいい。
これでやっと終わらせることが出来る。
やっと美咲は俺から離れることが出来るんだ。
これでもう、美咲が泣くことも
「翔くん、君が何を勘違いしているのか、わからないけど。もしかして、君また無責任に美咲から逃げようとしてるね?」
双子の弟、秋の言葉に思わず失笑した。
俺が美咲から逃げる?
まさか
「その逆ですよ。俺は美咲を俺から逃がしたんですよ」

