「嫌とはなんですか、嫌とは!!」
まったく人の話を聞かない姉さんはずかずかと部屋に入り込んできて、きっと俺を睨み上げた。
「大体あなたは昔からそうです。いつもいつも美咲さんを泣かせるくせに謝りもしない」
「……」
「聞いてるんですか?翔さん?」
説教を始めた姉さんに俺は黙秘を始める。
この人の説教は一々めんどくさい。
外ではいかにもお嬢様みたいな佇まいや振る舞いをしているが、本性はお節介で小うるさい小姑みたいな性格をしてて、誰よりも気が短い。
そのくせ怒ったらますますそれが酷くなり、説教を始めたら半日では終わらない。
だから俺はいつものように黙秘をする。それが一番話をややこしくしない方法だからだ。
それに姉さんの言っていることはいつも正しすぎるのだ。
この人も俺とは違い、自分が正しいと思ったことはたとえ人に馬鹿にされようが意地でも曲げない頑固さがある。
それは自分の気持ちには素直ということなんだ。
まったく、俺の周りには自分に素直な人間が多すぎて本当に嫌になる。
どうして俺はこんな風になれなかったのだろう?
まぁ、今更そう思っていても、もう後には戻れない。

