「あぁー、美咲もついにお嫁に行っちゃうのか…、覚悟してたけど、やっぱりつらいなぁー。本当に苦渋の決断だったんだよ!!こんな泣き虫で弱虫で意気地なしの翔くんに美咲を嫁がせるなんて!!」
「でもでも、他の会社のキモイ社長子息とかより幾分はましかなって思ったんだよ。本当になんでもっとかっこよく育ってくれなかったのさ!!この18年間、何のために生きてたの?」
双子はいつも通り人の心を抉るようなことを笑顔でぐさぐさ言ってくる。
というか、『何のために生きてたの?』はさすがに酷すぎる。
俺の存在を否定しているようなもんだし。
「そんなに嫌なら、そんな条件出さなきゃいいじゃないですか!」
ぶすっと不機嫌気味に言うと、双子はきょとんと首を傾げた。
「馬鹿だね。翔くん。そのくらいの覚悟でもしなきゃ僕たちはね、やり直すことが出来ないんだよ」
「いつまでも、家族みんな幸せだったらそれでいいという永遠に終わりのない夢からは醒めなきゃいけないんだ。そんな甘っちょろい考え方だから、花菱は倒産寸前までなってしまった」
「僕たちはたとえ美咲に嫌われて一生口をきいてもらえなくなってもいいんだよ。それぐらい酷いことをしてるっていう自覚はさすがに僕たちでもあるし」
「だからね、翔くん。美咲をよろしく頼むよ」
「こんな酷い兄を持ってしまったかわいそうな僕たちの妹を大切にしてあげてね」
「僕たちは君のこと、昔から大っ嫌いだけど、翔くんがきっと美咲のことを世界で一番大切に想ってるってとこは認めてあげるよ」
「だから、今度は変な意地とか張らないで、美咲を泣かせたりしないでね。もし泣かせたりしたら…」
「「僕たちが君を殴り飛ばしにいくからね」」
笑顔で物騒なことを言う双子はあはははははと笑いながらその場でフォークダンスし始めた。
・・・やはり、この双子には敵わないな…

