その一言で、この二人がいったい何がしたいのか一瞬で把握できた。
「…つまり、花菱に援助して欲しいとそういうわけですか…」
事実、この時の花菱はかなりやばい。
ほぼ倒産直前で、しかも跡取りである夏さんの突然の行方不明に加え現社長の急病などでどんどんと花菱の株は右肩下がりになっている。
建て直そうとしても資金がない、だからこうやって土下座までしてお願いに来ているわけだ。
だけど
「今現在、資金があったとしても花菱が元の経営状態に戻るのはどう考えても無理があります。ので設楽が花菱に資金援助したところでこちらには何もメリットがありません」
例え幼なじみといえど、会社の利益に関わるようなことを土下座一つですぐに承諾できるわけない。
こちらも一つの企業なんだ、利益があることしかやれない。
「メリットがない?僕たちは最初から交換条件を述べてるじゃないか、ねぇ?」
「翔くん、僕たちはそっちにメリットがない話なんて最初からしてないつもりはないんだよ」
交換条件なんて…、そんなの…
そこで俺はパッと彼らの最初の言葉を思い出した。
まさか…
「美咲が…その交換条件だって言うんですか…?」

