『設楽翔』という存在が美咲の想いを縛り付けている。
もし俺という存在が美咲を泣かせ、苦しめるというならば、彼女を解放させならければならない。
そしたらまたきっと彼女は笑ってくれるはず、あの時のように、まだ何にも縛られていないあの時のように笑顔になってくれるはずなんだ。
たとえその笑顔が俺に向かってではなくても、それを取り戻したかったんだ。
そして2年前のあの日、美咲が屋敷に訪れるであろうその時間に俺は見せつけるようにあの場面を意図して美咲に見せた。
あの時、美咲の表情は見えなかったが、俺の名前を呼ぶ声が聞こえなくなり、美咲がいたであろう場所を振り向くと、そこにもう美咲はいなかった。
これできっと美咲はもう俺の前に現れることは二度とないのだろう。
安堵する気持ちと裏腹に胸が酷く痛んだ。
また泣かせた…でも、きっとこれで最後だ。
これで美咲が俺に泣かせられるのは最後、もう大丈夫。
なのに…
「Hey!カケル、Are you okay?アナタ、今とてもカナシイ顔シテマス!!」
隣にいた白いスーツに身を包んだ、外国人の女が片言の日本語でそう言った。
「いや、大丈夫だ」
「Really?Your face is looked like a crying boy(今にも泣きそうな顔しているよ)」

