美咲と関わるのが怖くなった俺は徐々に彼女から距離を取り始めた。
美咲はそれに気づいてるのか、気づいていないのかはわからないが俺が花菱の屋敷に行かなくなると今度は美咲が設楽のほうによく訪れるようになった。
暇になると毎日、毎日、顔を見せに来る。
その行為自体は嬉しいが、結局俺は彼女を泣かせることしかできなかった。
それなのに懲りずに来るのは何故なのだろうと考えても、答えは見つからないまま月日が流れた。
そして、ついに気づいた。
彼女に、花菱美咲には生まれた時から俺以外の選択肢なんて無かったということに。
あんな酷い態度を取り続けている自分に対し、今でも好意を持っているのはきっと俺が幼いときに彼女に植え付けたものだからと思う。
まだ自我もはっきりしない美咲に婚約者なんてものが出来たら、しかもその相手がいつも一緒にいた俺であったのならば、美咲の好意が俺に向かれるのも当然のことだった。
だって彼女は信じているのだ。
自分の運命の相手が俺であることを。
その想いが仕組まれたものだとも知らずに、信じ続けているのだ。
ねじ曲がった考え方かもしれないが、そうとしか思えなかった。
そうでなければ、俺は何故美咲が傷つきながらも自分なんかが好きなのかが理解できない。

