美咲を避けているのはそれだけが理由ではなかった。




父の用事が終わり、屋敷から出ようとしたら




「わっ!!!」




物陰から美咲が突如現れた。




本当は心臓が出そうなほど驚いたが、そんな素振りを見せまいと俺は平常を保っている振りをした。




「いやぁー、お兄ちゃんたちから逃げるの大変だったよー。まぁ、なんとかなったけど…」




庭で相当暴れていたのだろうか、美咲のいたるところに草や葉っぱがついていた。




俺の視線に気づいた美咲は慌てて手で服や髪についた葉っぱを払い、指で顔を掻きながらはにかんだ。




その笑顔を見て、胸がきゅっとなったが、美咲に気づかれないようにいつものように無表情を装う。




「翔くん、もう帰るの?」




顔を覗き込んでくる美咲に胸が高鳴ったが、俺は美咲から顔を背けた。




「もう用事は終わったから」




「じゃあ、ちょっと遊ぼうよ。最近、翔くん全然遊んでくれないから、つまんない」




そう言って、手を握ろうとした美咲の手が俺に触れた途端





「それは無理だ」




俺は手を引っ込めてしまった。