あっという間に車は設楽の屋敷に着いた。
まぁ、昨日わたしが徒歩2時間で家に帰れたぐらいだし、元々そんなに離れてはいなかったんだよね…
昨日は設楽の屋敷に着いて、まっすぐに自分の部屋に逃げてしまったが、今日はどこにも行かず、ある場所に向かう。
翔くんの部屋の前に着いたわたしは昨日ここであった出来事を思い出し、また胸がちくっと痛んだ。
扉をノックしようと右手を上げると、その手は震えていた。
やっぱりまだ、怖いよね…
でもいつまでも逃げてられない、わたしは前に進まなければいけないの。
コンコン
「あの、み、美咲です!!」
昨日出来なかったノックをした後、返事が来るのを待っている間、わたしは心臓がバクバクと高鳴っていた。
翔くん…返事してくれるかな…?
・・・・・・・・・
・・・・・
・・・
「…入れ」
長い沈黙が続いた後、やっとのことで扉の向こうから翔くんの声が聞こえた。

