その手はとっても懐かしくて、優しくて、小さいころから大好きだった兄さんたちの手だった。




「ごめんね、美咲。僕たちのこと酷い兄さんたちだと思っているんだろう?」




「でも君がそう思っても僕たちは仕方ないと思ってるよ」




頭上から二人の優しい声が聞こえてくる。




そっと上を見上げると、そこにはいつもの優しい兄さんたちが笑っていたのだ。




「君はたくさん苦しんで、たくさん頑張ったね。僕たちはずっと君のことを見ていたからわかるんだ」




「そして君がもうこれ以上頑張れないことも、これ以上苦しんだら壊れてしまうことも、僕たちは知っているよ」





「じゃあ、なんで…」




わたしにこんな酷いことを…




わたしが全部言わずともわかったのか兄さんたちは悲しそうにまぶたを落とし、わたしの頬に手を触れた。




「僕たちが思うに、『恋』っていうのはね人に伝えて初めて『恋』になると思うんだ」




突然そんなことを言い出す兄さんたちの話にわたしは瞬きをしながら聞いた。





「単純に人を好きになるってことはね、それはその人の『想い』であって、まだ『恋』じゃないんだ」




「『恋』というのは、誰かがその『想い』を想い人に伝えた時にやっと始まるんだと僕たちは思う」