「冗談だよね、兄さん?」




やっぱり無視。




わたしの不安は屋敷の玄関ホールに近づくにつれ、どんどん大きくなった。




そして同時に悲しくなったのだ。




兄さんたちは結局、わたしのことを花菱の駒だとしか思っていない。




どんなにわたしが泣いていようが、苦しんでいようが、そんなの兄さんたちには関係ないんだよね?




玄関ホールの扉が開き、目の前に止まっていたのは、見覚えのある設楽の車だった。







「やだ、やだ、やだ!!戻りたくない!!お兄ちゃん!!わたし、やだ!!ここにいるの!!」




子供のように泣きながら駄々をこねるわたしを、兄さんたちは無理やり車へと押し込んだ。




酷い、酷い…兄さん、酷いよ…




車の中で手で顔を覆いながら泣くわたしを見ても、きっと兄さんたちは何とも思っていない。




昔から意地悪で、泣かされてばかりだったけど、わたしが泣きだすといつも慌てたように慰めてくれたのに…今はもう…




コンコン




誰かが車の窓を叩いた、それが合図だったのか、わたしの座席のほうの窓がうぃーんと開き、突然大きな二つの手に頭を撫でられた。