そういえば、ひばりさんって今でも夏兄さんのこと想ってるんだっけ…
夏兄さんは他の女の人とどこかに逃げたと双子の兄たちが言っていた。
それでも、ひばりさんは夏兄さんを…
「あの…少し聞いてもいいですか?」
「はい、なんでしょう?」
「夏兄さんのこと今でもまだ諦めていませんか?」
わたしが遠慮がちに聞くと、ひばりさんはにっこりと笑い、
「えぇ、今でもあの人のことを想っていますよ」
と言ったので、わたしはじーんと胸にしみた。
ひばりさんって本当にいい女!!
夏兄さんもったいない!!ひばりさん以上の女の人なんて絶対いないのに!!
「あらっ、もうこんな時間。わたしくしったら長居しすぎたようですね」
時計を見るなり、慌てながら立ち上がり、扉のほうへといそいそと向かった。
部屋を出て行く際に、ひばりさんはくるりとこちらを向き、にこっと笑った。
「それでは、美咲さん。どうか、あの子をよろしくお願いしいますね」
そして深くお辞儀をしてから、部屋の扉をぱたりと閉めた。

