グスグスと鼻をすするわたしを見て、ひばりさんは慌てたように『そういうわけじゃないんですよ』と言いながら、頬から手を離し、着物の袖から綺麗なハンカチをわたしに渡してくれた。
「美咲さんはいいお馬鹿さんなんです。だから、あの子にはあなたのような子じゃないといけないと思うんです。このままじゃ、本当に本当に後戻りが出来なくなるほどあの子は後悔することになると思いますから。だから、これは慰めではなく、お願いです」
そして、ひばりさんはわたしの手を握り、真剣なまなざしでこう言った。
「どうか、翔さんを助けてあげてください。もちろん、美咲さんがあの子にどれだけ苦しまされ、胸を痛ませたことは知っています。残酷なことを言ってるもわかっています。でも、どうか美咲さんは翔さんのことを諦めないであげてください」
あまりの真剣さゆえに、どう返答したらわからなかった。
なんなんだろう、翔くんの後戻りできないくらいの後悔って…、それにわたしが翔くんを助けるって…
でも…
「…どんなに辛くてもですか…?」
「…はい」
それがどんなに残酷なことなのかきっとひばりさんだって知っているはず。
それでも、それでも…
「こんなわたしでも…翔くんの助けになることができるんですか…?」
怖いけど、つらいけど、わたしは翔くんのことが好きなんだ。

