「あの、でも…熊のぬいぐるみに意思とかないと思いますが…」
「えぇ、だからもしの話です。もしもあのぬいぐるみに気持ちというものがあったのならきっとそのこも翔さんのことが大好きだと思うんです、ずーっと一緒にいましたから。だからもしもの話なのですけれど、もしあの時熊のぬいぐるみが翔さんのことを諦めていなければ、二人とも何も失わずにいられたでしょう?」
もしって…絶対にないと思いますよ。
「それに身勝手かもしれませんが、わたくし、美咲さんが今のあの子にとっての熊のぬいぐるみだと思うんです」
・・・・・・・・・は?
えっ、いや、いったい何を?
ひばりさんの言葉にチンプンカンプンになりながらわたしは聞いた。
「あの、でもわたし熊のぬいぐるみみたいに翔くんに好かれてませんよ?」
さっきの話からすると、ぬいぐるみと翔くんは相思相愛みたいな感じで、わたしはむしろ翔くんに嫌われてて…
うぅ…悲しい…
「…そうですか…、やっぱりあの子はどうしようもなく天邪鬼ですね」
またボソボソと小声で何かを言いながら、はぁと大きくため息をついたひばりさんは真剣な目でわたしの目をまっすぐ見た。
「それでもやっぱり、翔さんにはあなたが必要なんだとわたくしは思うんです」
「………」
どうして、そんなことを言うのだろう。

