いたかもしれないのに…じゃあわたしにはどうして見せてくれなかったの?
冷たくて、冷たくて、冷たくて、氷のように冷たくて
わたしの中の翔くんはいつもそんな感じ。
いいなぁ、ひばりさんの中の翔くんはきっとひだまりのようにポカポカしてるんだろうなぁ…
うぅ…また泣きそうだ。
必死に涙をこらえながら、ひばりさんの話に耳を傾けた。
「だけどね、ある日ね、誰かさんに『ぬいぐるみなんて子供っぽいものばかり持ち歩くんではない』と言われたんですよ。まぁ、その誰かさんというのはわたくしたちのお父様なんですけどね、普通言いますか?まだたった4歳の子供に」
ひばりさんは目頭を立てながら、少し不満そうにそう言った。
お父様…巧おじさんのことか…でも、あの人なら言いそうだな。
喋ったことはないけど、外見のイメージですっごく堅い人って覚えてる。
「そしたらですね、その日までずーっと手放さなかった熊のぬいぐるみを突然いらないって言い出して、いったいどうしたことかとお母様や桂さんがね、どうにかしてぬいぐるみを持たせようとするんですか、これが頑固で意地でもいらないって言うんですよ。目にいーっぱいの涙を溜めながら」
その日のことを思い出しているのか、ひばりさんは懐かしそうに明後日の方向を見つめていた。
「本当にあの子はお父様へのあこがれが強すぎて困ったものです。あの子の中ではお父様はきっとクールでかっこいい大人の男って感じですがね。まぁ、わたくしに言わせればただの頭が堅いだけの中年親父にしか見えませんけどね」
結構、毒づきなんですね…ひばりさん…

