ビクッ
その言葉を恐れていたかのようにわたしの体は震えていた。
「その黒い渦っていうのはたぶん、不安とかそういう感情だと思うし、その…だから…」
うまく説明できないのか、それとも言い出しにくいのか、聖美は目を泳がせながら言葉を濁らせようとしていた。
聖美はやっぱり優しいね、未だにわたしが翔くんのこと嫌いって見栄っ張りを信じるふりをしてくれてる。
でもね、聖美、そんなのことは…
「そんなこと…もうとっくに気づいてたよ…」
そう、もうそんなわかりきっていることは全部全部わたしは気づいていた。
嫌いと嫌いといってもやっぱりわたしの中心には必ず翔くんがいて、翔くんの言動に悲しんだり、喜んだり、怒ったり
どんなに他人に言い訳しても、どんなに自分を騙していても、わたしはやっぱり翔くんのことを諦めきれなかった。
どうしようもなく好きで、好きで、好きで、どんなに翔くんのことを酷い人だと頭で理解していても、無理だった。
嫌なところを見ていくたびに、きっとどんどんこの気持ちも冷めるだろうと思っていたけど、わたしが馬鹿だった。
そんなわけないのにね、
もうそんなことじゃ嫌いになれないくらい、わたしは彼のことが好きなの。