黒い渦というのは物理的ではなく精神的なもので翔くんのことを考えていると最近、頭の隅でチラチラと姿を現す。
別にいつも翔くんのこと考えてるんじゃないよ、なぁーんて…誰に意地を張ってるんだか…
最近わたしの頭の中に現れた黒い渦はみるみるうちにわたしを取り込んでいく、そんな気がした。
「そんなわけないのにね、わたし変になっちゃたのかな…」
伏し目がちにそう呟くと、聖美が隣で首を横に振る気配が感じられた。
「変じゃないよ、美咲。ちっとも変じゃない」
「本当?」
聖美を見ると、笑顔でうんと答えてくれた、
そして少しだけ間を置き、真剣な顔つきでわたしを見た。
「こんなこと言ったら、美咲、きっと怒るかもしれない。でもね、やっぱりやっぱり、今日話を聞いてみて、思ったんだ」
やけに前置きが長い。
「…何を?」
「美咲、やっぱりあなた、まだ翔くんのこと好き、なんだよ」

