その日、わたしは設楽の屋敷には帰らず、聖美の家にお泊りすることにした。
桂さんに電話でそのことを伝えると、少し寂しそうに「そうですか…、それではどうか楽しんできてください。帰ってきたとき、また美咲様のいつもの笑顔を使用人一同、心からお待ちしております」と言われ、また泣きそうになった。
気付かれていたのだ、ずっと前から。
わたしの変に明るく装ったあの強がりに、みんな気付いていたんだ。
あーあ、わたしって本当に昔から隠し事見抜かれるタイプなんだよね。
本当にわたしって駄目だな…
ちゃんと自分の気持ちをはっきりさせないうえに、周りのみんなにまでこんな心配かけちゃって…
一人でまた暗い気持ちになっていると、聖美はずいっとお菓子の袋をわたしの前に差し出してきた。
「お菓子、美咲の好きなもの全部用意したから!今日はカロリーのことなんて気にしないで朝まで思いっきり食べよう」
既につまみ食いをしたのか口をもごもごさせている聖美を見て、なぜか自然に緊張が解れた気がする。
そういえばここ最近、ずーっと気を張りっぱなしだったもんね…
「そうだね、それじゃあ遠慮なく。いっただきまーす」
聖美の行為に感謝しながら、わたしはお菓子に手を伸ばした。

