実は一週間前から翔くんの帰りがすっごく遅くなっている。
前はどんなに忙しくても、夕食前には帰ってきていたのに、最近はずっとこの時間まで帰ってこない。
お仕事、そんなに忙しくなったのかな?しかたないかと思っていても、何故かすっごく不安になる。
別に翔くんが何時帰ってきてもわたしには関係ないが、気になるものは気になる。
「まだかなぁ…」
そう呟いた瞬間、廊下から慌しい足音が聞こえてきて、わたしはむくっと急いで起き上がり、扉の方に近づいた。
何日も前からこの聞いてるこの足音は翔くんが帰ってきた合図。
きっと今頃何人もの使用人さんたちが玄関ホールで翔くんを待ち伏せてるはず。
わたしはもちろん行かない。だっていつものこの時間帯わたしは絶対に寝てるって思われてるから、まさか誰も翔くんが帰ってくるまで起きてるなんて思わないだろう。
扉をソーっと開け、外の様子を確かめる。
さっきまで人っ子一人いなかった廊下の向こう側から、たくさんの人がこっちに向ってくる。
その人だかりの先頭にいるのはもちろん翔くんである。

