机の上には既に別のお鍋が置いてあり、中身を見てみると、これもお粥が入っている。しかも、すっごく冷え切ってる。
まさか…まさか…
「か、翔くん…お薬…飲んだ?」
嫌な予感がしたのでそう聞くと、暫く沈黙が続き、わたしは確信した。
この人、絶対に薬飲んでない!!
だって、この冷えたお粥食べられた形跡ないもん!今、思えばわたし帰ってきたとき桂さん薬持ってたし、なんじゃこの人!!
「翔くん、お薬飲んでないんだね」
「………」
翔くんからの返事は返ってこず、またキーボードが叩かれる音だけ部屋中に響く。
お鍋を机の上に置き、くるりと翔くんのほうへと向いた。
「ねぇー、翔くん。病人が薬飲まないで何してるの?本当に熱高いんだから、寝てないと駄目だよ」
「そんな暇ない。ただでさえ会議が潰れたっていうのに…俺に休む暇などない」
きっと他の人が見たら今のわたしはにこにこと笑っていて、ちっとも怒ってるとは気付かないだろう。でも、わたしの腹の中では確実に怒りが湧き上がってきていた。
何が休む暇がない!?会議が潰れた!?
仕事、仕事、仕事って…あなた…

