カタカタカタッ
キーボードのキーを叩く音だけが虚しく部屋に響き渡る。
わたしは口を引きつらせながら、翔くんに聞いた。
「翔くん…熱で倒れたんじゃないの?」
「別に大したことじゃない」
そう答え、真剣にじーっとパソコンの画面を見ている横顔を見ていると思わずため息を漏らしたくなる。
いやいや、翔くん。
大したことあるんですよ。
あなたが熱でぶっ倒れたせいで休暇中だった使用人たちが全員戻ってきたんですよ、どこが大したことないですか。
腹の中から沸々と湧き上がる怒りをなんとか抑え、また笑顔で口を開いた。
「桂さんがお粥作ってくれたの。食べるよね?」
「そこに置いといてくれ」
まだパソコンの画面に夢中の翔くんを横目にわたしはベットの近くにある机にお粥が入ってあるお鍋を置こうとしたが…
…ん?

