顔をよーく見ると、頬がほんのり紅い。絶対に高熱で安静にしなければいけないのに、何をしてるの?あの人は。




「さっきわたしたちも止めたのですが、まだ仕事を終えてないとかなんとか言われ、追い出されてしまった始末…、このままではまたお熱が上がってしまいます」




ご年配のメイドが視線を伏せながらそう教えてくれて、わたしはもう一度視線を翔くんに戻した。




翔くん…




さっき桂さんに聞いたが、翔くんは大切な会議の前に倒れたらしい。責任感の強い翔くんだからきっと自分の体調不管理のせいで仕事に支障を出すことはきっと許せないのだろう。だから、熱だからって自分を甘やかさないんだね。




それはとっても凄いことだよ、凄いことだと思う。




でも…




廊下で顔を蒼くさせた使用人たちが駆け回る姿を見たわたしはこれを止めさせなければいけない。




みんな、みんな翔くんを心配してるんだよ。これ以上、自分を好きでいてくれる人に悲しい顔なんかさせちゃ駄目だよ、翔くん。




「桂さん、みなさん」




出来るだけ声のトーンを抑えてわたしは言った。




「これからわたしの支持に従って動いてください」



その言葉でその場にいた全員が深く頷いた。