「はい、つい先ほどお倒れになりまして、計ってみると熱が38度5分ありまして…」
「38度5分!?」
それはかなりの高熱だ、倒れても当たり前だ。
でも、ここ数日の翔くんを見ていたけど、とくに具合が悪そうな感じはしなかったけど…
はっ!別に翔くんを見ていたのは深い意味じゃないの。ボーっとしてるとあっちが勝手に視界に入ってくるのよ!!
誰にしてるかわからない言い訳を心の中で叫び、こほんと咳をした。
「で、こういうことですか…」
「はい…」
いつもなら静か過ぎて怖い長い廊下はたくさんの使用人たちの群れで溢れかえっていて、とてもじゃないけど普通とは言えない。
「翔様が、美咲様が嫁いでくる際にほとんどの者にちょっと長めの休暇を言い渡したはずなんですが、どこから聞きつけたかはわかりませんが、翔様が熱だと知った途端皆帰ってきてしまい…本当に申し訳ありません」
深々と頭を下げてくる桂さんにわたしはぎょっと目を見開いた。
「ななななな、なにしてるんですか!!顔、上げてください!!桂さんが謝る意味がわかりません!!」
「しかし、美咲様はまだ設楽に嫁いでまだ半年も経ってなく、きっとまだこの屋敷にも慣れていないはず…、それなのにいきなりこの数の使用人が現れ、美咲様が混乱なさるのが申し訳なく…」

