「翔くん、翔くんは指輪してないの?」




そう聞くと、水を飲もうとした翔くんの手がピタッと止まった。




まさか、まさか、まさか…




胸の中で嫌な予感がまだかまだかとウズウズしているのがわかる。いや、駄目よ!!翔くんを信じるのよ。




だが、返ってきた答えは見事に見事に嫌な予感が的中してしまった。




「一応、一緒に用意したけど…」




「けど?」




ニコニコしながら話を続きを催促するわたしに観念したように翔くんは重たい口を開けた。




「は、はめては…いない」




………………………………………




はぁーん、そうですか…そうですか…、わたしにははめろはめろと急かしたくせに結局自分はこうですか。




バツが悪そうにわたしから目線を逸らす翔くんにちょっとした殺意が芽生え、わたしは桂さんを呼んだ。




「桂さん、翔くんの結婚指輪どこにあるか知ってますか?」



わたしがそう笑顔で聞くと、桂さんは




「翔様の書斎の机の引き出しの中でございます」




と笑顔で答えてくれた。




「お願いですけど、それを今すぐわたしのとこまで持ってきてくださいな」