むむむっ…
わたしは意を決して、指輪を箱から取り出した。
これをはめてしまったら、きっともう後には戻れない。わたし自ら夫である翔くんから貰った指輪をはめるということは今度こそ今度こそわたしは本当に設楽に嫁いだと証明してしまう。
それでもはめると、証をつけると、いうならば必要以上の決心をしなければならない。
これは今だけの問題だけではなく、これからの人生に関わる問題なのだ。
ずっとずっと翔くんの傍で妻としていなければならない。果たしてそれがわたしに出来るのだろうか?
たった少しのことで翔くんへの想いを捨てたわたしにこれから一生翔くんのためだけに生きていけるのか。
もしかしたら今まで以上に辛くて、苦しくて、逃げ出したくなる時が訪れるかもしれない。
もしそんな時が訪れたらわたしはいったいどうなるんだろうかと想像するだけで怖くなる。
でも、それでも…それでも…
翔くんが指輪を渡してくれたということはわたしは、認められたのだ。
設楽財閥次期社長の妻として、翔くんの妻として、認めてもらえたのだ。
これはいろんな意味が籠められた重い重いモノ。
はめることによってわたしは花菱だけではなく設楽という大きなものも背負わなければいけなくなるかもしれない。
それでも…それでも…
いっぱいのいっぱいの重たい想い以上にわたしはこれをはめられる喜びの方が何倍も、何百倍もあるの。

