翌朝、僕は休みだというのに高校時代と同じように朝食を取り終えると、いぶかしがる家族の視線を他所に家を出た。ベースボールキャップを深くかぶり、色も地味めなジャンパーを羽織ってバス停へ。微かな後ろめたさも、程よい刺激にすらなった。
 朝のバス停。人々の列。その中に少女が、いた。
 僕は少女の姿を認めると、さっと列の一番後ろに並んだ。少女の乗るバスは、僕が高校時代に使ったバスより先に到着する。行き先は全く別の方向、僕の良く知らない方面ではあったが少女のコートや制服から察するに、隣町だと思われた。