東京の大学に何とか滑り込めた僕は、順調に学生生活を送り始めた。1年、2年、3年が過ぎ、4年目の春が来た。
 今年は、例年より早く故郷で春休みを過ごすこととなった。いつもならば、吐く息の白さが気にならなくなる頃に実家に戻るのだが、今年は4年生である。地元企業への就職活動も視野に入れての、早めの帰郷である。
 未だに身体に馴染まないスーツに筋肉をこわばらせ、僕は高校時代に並びつづけたバス停の列に加わった。今日訪問する会社は出身高校のすぐ近くだ。